マイケルアレフのことばの不思議な世界

  簡単だと思いこむことの間違いについて
 同じなのに違うとはどういうこと? 1+1=2の説明 

前置き; ある中学校での先生の話

今日は小学校で学んだ算数の「1+1=2」について解説したいと思います。
生徒:一部の生徒「なんだ、簡単だ」と反応する。
先生:簡単なことかどうか、まず、基本的なことを質問することから始めます。
ここに赤いりんごが二つあります。

         
これを足すと 1+1=2 です。これに問題はありませんか。
生徒;問題ありません。やっぱり簡単だ。
ではその一つを青いりんごに置き換えます。するとどうなるでしょうか。

   
           
これでも1+1=2 は成り立つでしょうか。 
生徒:足せると思うけど、なんか変な感じ。

一方が小さいとどうなるでしょうか。大きさも、色も違います。
           
これでも1+1=2 ですか。計算は成り立っていますか。

生徒:なんか。ずっと変な感じ。足せないと思う。

一方をバナナにしたら・・・どうでしょうか。バナナは一房3本ついています。
          

これでも 1+1=2 の計算は成り立ちますか。
生徒: 足せないと思う。

食べ物ではなく生き物にしたらどうでしょうか。
           かわいい猫ですね・・・。
この場合は1+1=2が成り立つでしょうか。


一方を乗り物の車にしたらどうでしょうか。
           

1+1=2は成り立つでしょうか。
少し考えてみてください。(1分が経過する)

先生: だれか説明できる人いますか。何か意見があったら言ってください。

生徒: 同じものでないと足せないと思います。そうでないと、なんか損しちゃいそう。
生徒: ごまかされないようにしたいと思います。
生徒: なんか変だと思います。
生徒: 普通、そういうこと足し算しないと思います。同じものしか足さないと思います。
生徒: 計算で損しないようにしなければいけないと思います。
生徒: よくわかりませんが、全部1+1=2 になると思います。

先生:では、みんなに質問します。
同じものでないと足せないと思う人 手を挙げてください。大半が手を挙げる。
同じものでなくても足せると思う人 手を挙げてください。少数の人、手を挙げる。
わからない人? 少数。だまっている。

先生:「1+1=2」が簡単だと言った人に説明してもらいましょうか。
生徒: 照れくさそうに、「なんか難しくなりました。」 みんなの笑い

今回の授業で学んで欲しいのは、
簡単だと思っていても、わかっていないことがある」ということです。
説明できないということは、本当はわかっていないからでしょう。
わかっていると思っていても説明できない場合もあります。
この場合、まだわかりかたが足りないということです。

直線上に配置

      同じなのに違うとはどういうこと? 
その内容
1. 「同じ」という言葉の意味について
 「あれと同じものが欲しい」という場合、同じような性質、違いがないものという意味で使われますが、同一の物という意味ではありません。同一という意味で同じものが欲しいなら、その人から取りあげなければならなくなります。
2. 「1」とは何を意味しているのか
3. 「1+1=2 」についての説明

説明:
1.「同じ」という言葉の意味について
 さて、本題の「1+1=2」を説明する前に、まず「同じ」と言う言葉の意味について説明させてください。
「同じ」ということばは小さい時から使われていますが、ことばの使い方を正しく理解する必要を感じています。
「形、大きさ、色、長さ」が同じとか、通っている学校が同じ、同じ洋服を着ている、食べているものが同じなど、頻繁に使われる言葉です。
しかし「同じリンゴはない。同じみかんは存在しない。同じ本もない。」と言ったらどうでしょうか。
 ・ ・ ・ 多分おかしいと思う人がいると思います。
これは「同じ」という言葉の使い方を正確に理解していないためです。

ここにリンゴが二つあります。
              
       A         B  
リンゴAとリンゴBは同じリンゴです。この表現は普通に使われています。
しかし、AとBは違うものです。同じに見えますが、リンゴAとリンゴBは違うものです。

正確に言えば、全く同じリンゴではありません。
見える部分が似ていても、小さな傷がついているかもしれません。
中身が違うかもしれません。種の数が違うとか。重さも違うかもしれません。
よく見ると、置かれている位置も違いますね。Aから見ればBは自分ではありません。
ですから、違うリンゴと言えます。

Aから見れば、他は違うものであるという考えがわかれば、
同じではないという考え方もわかります。

このように「違うもの」を「同じ」と表現しますが、「同じ」と表現していても「違うもの」である場合があります。

複雑でわかりにくいかもしれませんね。
これは「同じ」という言葉に注意すべき使い方があるということです。

同じとは同一のものであるという意味と、
他に性質、状態、程度などが共通しているという意味でも「同じ」と表現します。

多くの場合は後に出てきた性質や程度が共通しているという意味で同じと使っています。性質や程度が共通しているという意味で同じと言いますが、実は全く同じという意味ではありません。

「同一のもの」として「同じ」という言葉を使う場合、更に考慮に入れなければならないことに時間の経過があります。
全く同じもの、同一のものであっても、時間と共に同じではなくなります。

時間が違えば同じものではなくなります。
買ってきたばかりの新鮮な魚をテーブルの上に置きっぱなしにしたら、腐って食べられなくなります。
同じものでも時間が経つと同じではなくなってしまうのです。
同じ魚ですが、違う状態になるとも言えます。
      
どんなものでも時間と共に変化します。違いが判らなくても変化はあります。
通常同じ状態に留まることはありません。

人の場合、自分の場合、時間と共に同じ人でなくなることはないと思うかもしれません。
明日になったら、自分が他人になっていたら大変ですね。
・ ・ ・ 同じ自分でいたいと思うでしょう。

しかし、人の体は新陳代謝により絶えず変化しています。
赤ちゃんだった時からどんどん大きくなって大人になります。
         
それからも年をとっていきます。おじいさん、おばあさんになります。
頭の中もいつも同じ状態ではありません。同じだったら困りますね ・ ・ ・ 。

勉強すると脳に知識が蓄えられます。経験することで賢くなります。
人も毎日変わっています。
同一の存在でも、全く同じ状態ではなくなっているのです。時間の経過と共に変化していきます。

植物の種を植えた経験がありますか。
見ていてもなかなか芽ができ来ません。
普通、幾日かすると芽が出てきます。出てきても、見ている間は、成長していないみたいです。
日にちが経つにつれ少しずつ大きく成長していることに気づきます。
   
人の成長も同じです。自分では気づかないかもしれませんが、自分も変化しているのです。

「同じ」という言葉の使い方の例です。
「同じ学校に行っています。」という場合、これは同一の学校という意味です。普通に使います。・・・その学校は一つしかないからです。
違う学校に行っているのに、同じ学校に行っているとは言わないですね。

「同じ学年です。」も問題はありません。
この場合、正確には4月~翌年3月生まれの人が同じ学年になります。
学年という範囲の規定があるため、同じ学年ですと言っても問題が生じないのです。

「同じ年齢です。」も問題はありません。
正確には誕生日から1年間は同じ年齢なので、同じ年に生まれた人の中には同じ年齢の人がいるからです。年齢と言う一定の枠を決めているので同じ年齢であることが成り立ちます。

「あれと同じものが欲しい。」という場合、
同じような性質、違いがないものという意味で使われますが、同一の物という意味ではありません。
同一という意味で同じものが欲しいなら、その人から取りあげなければならなくなります。
これらの例からわかるように、全く同じものは同一のもので、同じ時間に、同じ場所にあるという意味ですから1つしか存在しないのです。
今まで当たり前に同じものはたくさんあると思ってきましたが、全く同じものは二つは無いことになります。

たいていの場合、性質や状態などが同じという意味で同じと表現しています。


2. 「1」 についての説明

一つ、「1」 というのは自然数の最小単位である数字です。
自然数は 1   2  3  4  5 ・ ・ ・ と続く数の総称のことです。
実際に存在する物(物質)ではありません。物があるわけではありません。
実体がない自然数の最小単位の1というイメージを「1」という数字に当てはめ、置き換えているのです。

同じ1とは思えないような表記もあります。
エジプト数字、ギリシャ数字 α、マヤの数字 、1世紀頃インド数字
エトルリア数字θu、日本数字の漢字 、ヘブライ数 (アレフ) 等があります。
形は大きく異なりますが、意味するところは同じ数字の1です。

では 何が1なのでしょうか。1とは何を意味しているのでしょうか、また表しているのでしょうか。
辞典によると、1とは「 数の名、自然数のはじめ」とあります。

繰り返しになりますが、1とは自然数でいう最小の単位である「1」と表される最初の数字のことです。ですが、初めから決まった形はないのです。それをこれがイメージだと断定した方がわかりやすいので「1」になったと言えるかもしれません。

一つとは「あるものを1と考える」ことです。

むずかしい表現になってしまいましたね。

ここにある形はほぼ同じですが、正確には違います。大きさも違います。色も違います。
でも1とわかります。
        
形も、大きさも、色も違うことは、すぐにわかります。しかし、それぞれは違うものです。でも1と理解することはできます。これは脳がおよそこのような形であれば1として認識してしまうからです。

もともと1という数の実体はないのですが、いろいろな文字として表現されてきたように、イメージとして認識されてきたのです。


3. 「 1+1=2 」 の意味について
この簡単に思える“1+1=2”の中にあるのは“1”,“ 2 ”という数字、プラス“+”という記号、そしてイコール“=”という記号の4つです。

イコールの意味について
等号(とうごう、英: equals sign)は「=」のかたちをした数学の記号です。
「イコール」と 読むことが多いです。
等号の左右が等しい価であることを表し、等号で結ばれた数式を「等式」と呼びます。
1557年にウェールズの数学者ロバート・レコードによって発明されました。

プラス+の意味について
正の数を表すことに使う場合がありますが、ここでは足し算(加法)の演算子の意味で使われています。加える、順番に数える、などの意味があります。

1+1=2 の1は自然数でいう最小の単位である1と表される数字の1と1の足し算です。一般的に使われている10進法で表しています。2はその結果で自然数の2番目の数字です。

「一つ」とは自然数の1と対応させ、1を表していますが、対応のさせ方によって1は同じ1ではない場合もあります。どういうことでしょうか?

例: 3種類の果物がテーブルの上に置いてあります。バナナ、スイカ、ブドウです。
   1.  2.    3.  
「そのうちのどれか一つを取って下さい」という場合、
一つとはその3つの中の1つという意味です。

3種類の果物があることから、一つとは言っても、バナナの場合もあるし、スイカの場合もあるし、ブドウの場合もあります。

この場合の1は何を意味しているのか、何と対応させたのかが重要です。
この「一つ」とは果物の種類を「1」としたのです。

取った結果はバナナ、スイカ、ブドウと違ってきます。でも、一つの意味は同じで、一種類の果物という意味です。

従って、「1」とは1個とは限らない場合もあるのです。
ここでの「一つ」とは1種類の果物の意味ですが、取った結果はバナナが3本ついた一房のバナナである場合もあるのです。

その果物は1個であるとは定義されていないため、1個とは限りません。
ここでは果物の種類が3つあるという意味です。この1つとは果物の種類を1つと定義(決めて)いるのです。

この例は「物が違っても数えることができる」ことを示しています。


違っているものを数えることができるのは、ある枠を、この場合「果物の種類」と決めたからです。
(この特定の枠のことを数学では集合と表し、その枠の中にあるものを要素という。)

普段は同じものだからと数えていますが、同じかどうかは定義の仕方で変わってきます。定義の仕方で決めているのです。ですから、何が同じかということについて考えてみる必要があるのです。

「同じ」と言う意味について考えたように、
同一という「同じ」は一つしかないので、足すことは出来ません。
足せるのは性質、状態、程度などが共通しているという意味での同じものだからなのです。
言い換えると、全く同じものを足しているわけではないのです。

同じリンゴ、と言っても、リンゴには様々な種類があります。
一つのリンゴを考えてみても大きさも、形、色、味、生産地、作った農家、品種、季節などにも違いがあります。それぞれは一つのリンゴですが、大きさも、色も、形も違っていますし、味も違うでしょう。

ですからある枠を「同じ形」、「同じ品種」、「同じ色」、「同じ生産地」、「同じ重さ」と区別することで、足すことができるようにするのです。
「同じ生産地、同じ品種、同じ重さ」と枠を決めれば、より限定したものとなります。

先のリンゴの例に戻りましょう
「1」の枠を「りんご」とだけ定義すれば、大きさも色も産地も関係なく足すことができます。
            
ですから 1+1=2 が成り立ちます。
でも「1」の枠を「青いリンゴ」と定義したら、大きさも産地も関係なくても「青いリンゴ」だけしか足すことはできません。

             
この場合は1+1=2 は成り立たないのです。

どのように枠を定義するかで足すことのできる場合とできない場合などが決まります。
先ほどの例にあったように、1を「果物の種類」と定義すれば
                
これでも 1+1=2 の計算は成り立つのです。


下の絵には果物の種類はいくつありますかと聞かれれば、1,2,3,4と数えることができます。1+1+1+1+1+1+1+1=8 なので、8つと答えることができます。
               


これはなかなか足すのは難しく感じますね。
          

どういうふうに枠を決めるかが難しいからです。
でも「絵を1つとして数える」と定義すれば、これも1+1+1=3になります。


1+1=2の意味を理解することができたでしょうか。
簡単なことのように思えても、正確に理解していないことはたくさんあるかもしれません。
ですから、初めから簡単だと思わないようにすることも大切です。

今日の授業はここでおしまい。
では、また次回を楽しみにしていてください。

2016年11月 マイケル アレフ




後書き

今からおよそ半世紀前、私が高校生1年生のころ、夕食時、なぜ1+1=2なのか父親に質問したことがある。その時父親はすぐに答えて、「ここに茶碗が1つある、箸が1つある。1+1=2だ。当たり前だ。」というようなことを言った。

時代背景もあるので、確かにそう言えたのかもしれない。今でもそのように答える父親はいるかもしれない。

それから約10年後、質問したわけではないが、たまたまアルバイトで就職した先の設計事務所の社長さん(恩師大枝征彦氏)から1+1=2の説明を聞いた。彼は立教大学の物理課を卒業していて、数学に詳しかった。真実を伝えることを自分の使命のように感じていた。

大枝社長は「数学は数の学問だが、数とは何かがすべて解っているわけではなく、ずっと発展途上にある」と話した。「昔は0という概念はなく、マイナスの概念もなかった。分数、無理数などみな時代と共に、数学の進歩と共に、明らかになってきたものだ」と。そして無限の濃さアレフの話もしてくれた。

目から鱗とはこの時の経験だと思っている。当たり前で通っていることが、本当はわかっていないことがあることに気づかされた。以来、当たり前という考えはなくなった。こんな簡単なことと考えることもなくなった。

残念ながら、今ではその時どのように説明されたか詳細を覚えていない。ただあまりに強い印象だったので、その後、1+1=2の意味について、自分の中で良く理解し、よりわかりやすく説明することは出来ないかという思いが生じた。人生における一つの目標みたいなものである。

その後40年を経て、原点に戻り、もう一度その内容について説明することを試みた。



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