思い付き ★ 11 犯罪者のいない世界を作ることはできるか。
35年ほど前、半年くらいの間であったが、在日米軍横田基地の中で横浜海運という会社で引っ越しのアルバイトをしていた。転勤する若い兵隊から「大きく考えることの魔術」という本をいただいた。
「犯罪者のいない世界を作ることはできるか」という質問は、その中に書かれていたものである。
講演者がこの質問を聴衆である学生に提起した。学生はすぐに反応し、多くが「犯罪者のいない世界を作ることはできない」と答えた。人間は生まれながらに犯罪者である等の意見ばかりが出た。
講演者は、それはわかっているので、どうしたら可能かを考えてほしいと再度考えるように促した。
会場は静かになった。しばらくしてからだが、少しずつではあるが、積極的な答えが出始めた。
「貧富の差を無くせばいい。支援センター等を作り犯罪の根を断てばよいのではないか。教育施設を充実させる」などの意見が出てきた。
時を見計らって講演者は説明した。「できないと思ったら、頭脳はできない理由を考え出す。心はそのようにできている」と。
今もこのことを覚えているのは、自分なりに内容に納得し、学習することができたからだと思う。
さて、この質問に対する答えは簡単ではない。法を犯さない人などいないと誰でも思う。
それほど人間社会は病んでいる。不可能に近いことである。
答としては適切かどうかは別にして、一つ思いついた。
違う角度から見た答えに思えるかもしれない。
現時点では考えられないことではあっても、可能性としてはあるかもしれない。
つまり、犯罪者とは何か、という質問と関係する。
ウィキペディアによると、犯罪とは、一般には法によって禁じられ刑罰が科される事実・行為、刑法学上は「構成要件に該当し違法かつ有責な行為」と定義される。
犯罪者とは人類が創り上げた法律に違反する者のことであると考えられる。
法律を守らないから犯罪者が生まれる。法律を破るから犯罪者になる。
できるかどうかは別にして、一つの考えであるが、法律を無くせばいい。
法律で人を規制することを止めれば犯罪者はいなくなるのではないか。犯罪ということばも必要なくなるのではないか。
法律がなくてどうやって人間社会を守るのか。
これは大変難しいことであることは間違いないだろう。
しかし、法律の原点に帰り、法律すべてを見直し、法律の意味を変え、新たな考え方で社会を作ることができるなら、法律の無い犯罪者のいない世界を作り出すことができる可能性はあるのではないか。
犯罪ということばのない、犯罪が意味を持たない社会にすれば可能ではないか。
犯罪者のいない世界を作ることは可能かもしれない。少なくても法律違反による犯罪者ということばを無くすことは可能かもしれない。
しかし、人間に法律を超越した生き方ができるだろうか。
法律で規制されずに物事をうまくやっていくことができるのだろうか。
自分の意思だけで、良心だけで判断する社会を作ることができるだろうか。
その時、基準となるものは何なのだろうか。基準の無い社会はあり得るのだろうか。
人間の社会そのものの在り方を考え、基礎から社会を作り直す。
そうした社会を作るためには、それができるという思いが必要である。
理想となる社会を考え、できるという思いが、様々なできる理由を考え出す。
「初めにできない」と考えることが、考えること自体に大きな影響を与えることは確かである。この点に注意することは必要と考える。
人間の社会をより良い社会に変えることができるだろうか。
人間の意思、ことばによる思考、知力が実現を可能にする、生み出す力になると考える。
マイケル アレフ 2018年9月
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